粉雪-3年後のクリスマス-

 近づくとさらにわかる、彼女のあどけなさ。

毛糸の帽子が大きな瞳にかかりそうなほど、目深にかぶっている。


「君に、伝えたいことがあったんだ……」


 ひとつ、またひとつ。

彼女と俺の間に落ちては、消えていく。


「…私に?」

 舞い落ちる粉雪が、冷たく頬をくすぐる。

きょとんと見つめる彼女は、とても緊張していた。


「電話番号、間違ってるから」

「ええっ?」


 一方的にかかってきた電話。

それはタイミング悪く、俺は出てしまった。


そもそも、そこから始まったこの数週間だった。


「──いや、違うな。…君のかけた先は、俺だったんだ」


 言葉を聞き入れてくれる彼女。

そして、ふ、と表情を緩めた。


『ようやく会えるの』

 嬉しそうな電話をかけてきた君に、伝えなくてはならないことがある。


「それから──…」


 君はどんな顔で、受話器をとったのだろうか。



 ──それでも、伝えたい。


君の想いは届いている。


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