近づくとさらにわかる、彼女のあどけなさ。
毛糸の帽子が大きな瞳にかかりそうなほど、目深にかぶっている。
「君に、伝えたいことがあったんだ……」
ひとつ、またひとつ。
彼女と俺の間に落ちては、消えていく。
「…私に?」
舞い落ちる粉雪が、冷たく頬をくすぐる。
きょとんと見つめる彼女は、とても緊張していた。
「電話番号、間違ってるから」
「ええっ?」
一方的にかかってきた電話。
それはタイミング悪く、俺は出てしまった。
そもそも、そこから始まったこの数週間だった。
「──いや、違うな。…君のかけた先は、俺だったんだ」
言葉を聞き入れてくれる彼女。
そして、ふ、と表情を緩めた。
『ようやく会えるの』
嬉しそうな電話をかけてきた君に、伝えなくてはならないことがある。
「それから──…」
君はどんな顔で、受話器をとったのだろうか。
──それでも、伝えたい。
君の想いは届いている。
.
毛糸の帽子が大きな瞳にかかりそうなほど、目深にかぶっている。
「君に、伝えたいことがあったんだ……」
ひとつ、またひとつ。
彼女と俺の間に落ちては、消えていく。
「…私に?」
舞い落ちる粉雪が、冷たく頬をくすぐる。
きょとんと見つめる彼女は、とても緊張していた。
「電話番号、間違ってるから」
「ええっ?」
一方的にかかってきた電話。
それはタイミング悪く、俺は出てしまった。
そもそも、そこから始まったこの数週間だった。
「──いや、違うな。…君のかけた先は、俺だったんだ」
言葉を聞き入れてくれる彼女。
そして、ふ、と表情を緩めた。
『ようやく会えるの』
嬉しそうな電話をかけてきた君に、伝えなくてはならないことがある。
「それから──…」
君はどんな顔で、受話器をとったのだろうか。
──それでも、伝えたい。
君の想いは届いている。
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