粉雪-3年後のクリスマス-

 コートを片手に店を飛び出た。


 久々に訪れたホワイトクリスマスに、街は活気付いていた。

見上げる人々の隙間を縫うように走り、約束の場所へと向かう。


 見えない糸が、少しずつ俺を引き寄せる。



「はぁ…はあ…っ…!」


 白い息は大きく輪を描き、夜空に溶けていく。




 大観覧車。

それは、今はもう閉鎖してしまった遊園地。


最近できたテーマパークに客を奪われ、来場客は減る一方だった。

そして、あの名物だった大観覧車でさえももう手が出せなかったらしい。


閉めたはいいが、それを取り壊す資金もなく、そのまま閉園を迎えた遊園地は錆びるのをまつだけと化した。


 昔はライトアップされていたショーの舞台。

 人が賑わっていたはずの売店。


 遠くまで見回せていた、その大観覧車。


「…はぁ、はあ……っ!」


 地面に溶けていく雪を踏みしめ、辿り着いた目の前は真っ暗闇がそびえていた。

血の味がする口元をぬぐい、フェンスをよじ登る。



 時刻は、まもなく0時を迎えようとしていた。


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