粉雪-3年後のクリスマス-

 俺の有無を言わさない雰囲気に負けたのか、同期もため息をつく。

そして大学生の女の子も、ようやく頭を動かせてくれ、俺の告げた名前を繰り返した。

「こなか、ゆきと?」

「えー?聞いたことある?」

 もう一人の女の子は面倒くさそうに答え、張り詰めていた空気がほんのり壊れた。


 ……そりゃ、学部が違えばわかるわけないか。

俺も大学を出ているのだから、その答えはわからなくはない。


「変なこと聞いてゴ──」

 ごめんね、と言おうとした、その瞬間だった。


「あ、コナカユキトってあれじゃない?」


 とっさに腕をつかんでしまった女の子が、思い出したように小首をかしげる。

その隣の女の子の顔を覗き込んだ。


「ほら。病気か怪我かなんかで単位足りなくて留年したっていう…」

「あぁ、そんな名前だったかもねー」


 相変わらずもう一人の女の子の顔は引きつっている。


 場をすっかり盛り下げてしまった合コン。

ずっと黙っていた失恋直後と紹介された俺が、急に興奮し始めたのだ。

無理もない。


けれどここまで近づいた情報に、俺はもう引き下がれない。


「そ、その人、どこにいるかわかる!?」


 ドクドクと血が流れる音が響くようだった。

周りは驚いていたけど、関係ない。


 たった一つの、約束を果たしたいだけだ。