粉雪-3年後のクリスマス-

「んじゃ、自己紹介からねー」

 同期はシラフにもかかわらず、ハイテンションでマイク代わりに割り箸を握り始めた。

男たちの紹介は、同期によってその割り箸で指される。

名前と職業、そして趣味や特技など簡単に話が回っていく。


そして、俺の番だけ図々しく同期が遮った。


「コイツ失恋直後だから、慰めてやってね!」

 などと余計な情報を添えたおかげで、女の子たちは微妙そうに笑っていた。

もうこの時点で俺はアウトだろう。


 そのままの勢いもあるのか、同期は女の子たちにビールを注ぎながら聞いて回っていた。


「あ、私たちは大学生でーす」

「女子大生って響きだけで嬉しい!」

 参加している女の子二人が、照れながらはじめる。

それに悪ノリしているのは、愛する恋人にため息をつかれている同期だ。


「教師やってますー」

 そんな女の子には、

「俺にもイロイロ教えてー!」


「歯科助手を……」

 控えめな女の子には、

「次は俺の助手になる?」


 と、次々と歯の浮くような馬鹿丸出しの言葉で相打ちをしている。


「……バカ」

 同期の恋人の、拗ねたような…けど冗談だとわかっているのか、笑いながら見つめるその視線。

幸せそうな空気が、どこかうらやましくもあった。


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