粉雪-3年後のクリスマス-

「先輩と付き合うの?」

「は、はあっ!?」


 なんでそれを……!

 どっくんどっくん、と心臓がもろに反応し、驚きすぎて荒げた声で周りの目も厳しかった。


「ああ、いや、悪気があったわけじゃないんだが……」

 口をどもらせる同期に、昨日を思い出す。

席にいないと思ったら、席につけなかったということか……。


 チン、とエレベータの扉が開き、俺たちはようやく乗ることができた。

ぎゅうぎゅうと肩身狭く、隣の同期に小声で答える。


「ま、まだなんにも考えてないし…」

 そんな簡単に踏ん切りがついたわけでもないし、どうにも思考がズレる。


それは───



『ユキくん……大好き』



 あの声が、忘れられないからだろうか。




 俺たちが仕事するフロアに着くと、同期が「あ」と声を上げて思い出す。

「前に話した合コンだけどさ、イブにやろうと思ってんだ」


 イブって、二十四日──?


「クリスマスパーティーにでもなりゃぁいいじゃん?」

「…けど……」


 その日は彼女が待つ日。


 俺が困ったのを、なにか勘違いした同期。

「先輩ともまだなんも決まってないなら、独り身のうちにできることしようぜ」


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