今日は引き上げよう。
と踵を返したとき、目の前で一人のおばあさんがつまずいていた。
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ると、しわしわの顔を緩めて笑い返してくる。
「ああ、すみませんねぇ」
おとなしい色の着物で、年はかなりいっているだろうが、物腰の柔らかそうな印象を受ける。
ゆっくりと立ち上がらせて軽く膝をはたいてやると、おばあさんは腰を静かに折る。
「わざわざ親切にありがとうございます」
「いえ、これくらい……」
俺もひざを伸ばして立ち上がると、軽く会釈をして通り過ぎる。
こうして、誰かが笑ってくれることをするのは、好きだ。
『誰』かが……笑ってくれる…。
動かしていた足を止め勢いよく振り向いて、俺は息を吸い込んで声を張り上げた。
「あ、あの、すみません!」
俺の声におばあさんは反応してくれ、怪訝そうに振り向いてきた。
息を切らせて、もう一度おばあさんの元へ駆け寄る。
「…なんですか?」
小首をかしげたおばあさんに、息を整えて俺は向き直る。
「ご存知、ないでしょうか?」
俺が、『彼女』にできること───
「この辺りでコナカさん、というお宅をご存知ありませんか?」
──寂しそうな君を
少しでも笑顔にしたいんだ。
.
と踵を返したとき、目の前で一人のおばあさんがつまずいていた。
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ると、しわしわの顔を緩めて笑い返してくる。
「ああ、すみませんねぇ」
おとなしい色の着物で、年はかなりいっているだろうが、物腰の柔らかそうな印象を受ける。
ゆっくりと立ち上がらせて軽く膝をはたいてやると、おばあさんは腰を静かに折る。
「わざわざ親切にありがとうございます」
「いえ、これくらい……」
俺もひざを伸ばして立ち上がると、軽く会釈をして通り過ぎる。
こうして、誰かが笑ってくれることをするのは、好きだ。
『誰』かが……笑ってくれる…。
動かしていた足を止め勢いよく振り向いて、俺は息を吸い込んで声を張り上げた。
「あ、あの、すみません!」
俺の声におばあさんは反応してくれ、怪訝そうに振り向いてきた。
息を切らせて、もう一度おばあさんの元へ駆け寄る。
「…なんですか?」
小首をかしげたおばあさんに、息を整えて俺は向き直る。
「ご存知、ないでしょうか?」
俺が、『彼女』にできること───
「この辺りでコナカさん、というお宅をご存知ありませんか?」
──寂しそうな君を
少しでも笑顔にしたいんだ。
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