粉雪-3年後のクリスマス-

「……放っておけないから、かな?」

 それだけ言うと、ぴっと背筋を伸ばして背を向けた。

廊下の向こうで大人数の足跡が近づいてくる。


「ま、大いに悩みたまえ。青年!」


 そそくさと歩き出した先輩に、俺は何もいえなくて。

じっとそれを見つめるしかできなかった。





 結局、そのあとすぐに戻ってきた同期とは一日も話せず。

さらに先輩はずっと外出したままで、なにも進展はなかった。


お言葉に甘えて、大いに悩ませてもらっているところだ。


 “使命”を果たしながら、だけど。


「このあたりのはず……」


 調査会社から教えてもらった住所。

彼女の待ち人は、どこかにいるはずなんだ。


 街灯が寂しく俺の影を長くし、きんと冷え切る冬風がより孤独にさせる。


「今日はあきらめようかなぁ」

 残業を終わらせた後の人探しは困難を極める。

人通りも少ないし、周りはよくみえないし。


何にも繋がれない両手が、とても空しい。



 ──もし、先輩と付き合ったらそんなことはなくなるのだろうか。

きっとこの話をしたら、一緒に探してくれる気がする。



「…って、俺かなりサイテーじゃね?」


 それくらい、胸の中はもやもやとしていた。

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