粉雪-3年後のクリスマス-

 ───参った。

これ以上考え事を増やしたくないというのに、どうも悩みのタネは尽きない。


 暗い寒空の下、フラフラとした足取りで昼間のことを思い出した。




 昼休みを使って俺たちを心配してくれた先輩。

それなのに、まさか。


「…は、い……?」

 割り箸を落としたことにも気づかないほど、俺としては青天の霹靂だった。


「なに?それともこんなオバさんじゃ守備範囲外?」

 意地悪く笑う先輩の言っている意味がわからない。

いや、意味はわかるけれど、その奥にある『なんで俺なんだ』ということ。


「ちょ、ちょちょ、待ってください…え?なんか、ドッキリですか?」


 多分めちゃくちゃなことを言っていた気がする。

周りはお昼時で静かで、誰かがくすくすと笑っている気配もない。


隠しカメラでも仕込まれているのか?


「ひどいわね、女の子の一大決心をそんな風に言うなんて」

 ぷんとそむけた先輩の横顔。

耳まで真っ赤になっていた。



「な、なんで俺…なんですか……」


 そう、同期ならまだしも、この情けないこと極まりない俺。

イイトコなんて、自分でもわからないほどだというのに。


「んー、なんでだろう?」


 しばらく唸った後、先輩はかわいらしく笑った。

今までそういう対象として見れなくて、むしろ高嶺の花だったから。


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