こんなとき、なんて言葉をかけていいかわからない。

俺は散々励ましてもらったというのに、いざというときに、何もできない。


「……なんか、悪いな」

 ただただ、無力さだけが残る。

あまり同期を逆なでするのも悪いし、長居する前に席を立った。


 ミスはあってはいけないけれど、誰でも起こりうるもの。

そうやって割り切ってはいるものの、どうにも悔しさが残るんだよな。


オフィスをでて、近くの牛丼屋へ向かうことを決め空を見上げた。


寒い冬だというのにやけに青く広がる光景は、とてもちっぽけな存在だといわれてる気がする。



「並、でいいか」

 財布事情もあるし、と言い訳をつけて足を踏み出したときだ。

ブルル、とスーツの中で携帯が震える。


その時間帯にどこか期待していた自分がいて、かぱっと携帯を開く。


しかしそこには俺が残念がる顔が反射され、相応の相手からの着信だった。


「も、もしもし……」

「お仕事中申し訳ありません」

 前置きをおいて丁寧に話し始めたのは、あの調査会社だった。


紹介されて仕事を依頼したはいいけれど、あれから一向に連絡が入らず忘れていた。

だから、この電話が心底驚いたのだ。


「現時点で判明していることがありますので、ご連絡いたしました」


 心の準備もできていないうちに、電話越しに伝えられる用件。



「お客様の携帯番号の、以前の持ち主の氏名がわかりました」

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