粉雪-3年後のクリスマス-

 カノジョにフラれてから、一週間。

同期も忙しいらしく、あれから夜をともにはしていない。

けれど、なんとなく自分の中でも冷静になれてきた気がする。


 だからといって、すれ違うカップルをみては、「寒いから」といって、ぴったりくっついてきたカノジョを思い出したりもしている。


 矛盾だらけの自分。


眠る前は、必ずといっていいほどカノジョのすっぴんが思い浮かぶ。

料理しようとすれば、手が滑ってお互い醤油まみれになったことも思い出す。


 一緒にいて幸せだったのだろうか。

俺はやっぱり、カノジョがいないと寂しい。


できれば、カノジョを笑顔にさせるのは、俺でありたかった。



 枕がしっとり湿るのは、後悔の印なのかもしれない。



 そうして時間がたち、いまだ未練たらたらのまま、いつもの朝がやってきた。

相変わらず後輩の仕事ぶりにため息をつき、課長には怒られる。


だが、後輩も「ユキさん、この資料どこでしたっけ?」などと聞いてきてくれるようになった。

長い道のりだったが、その進歩にほんの少し褒めてやろう。



「なにやってるんだ!」

 久々に課長の怒声がオフィスに響き渡り、俺ははっと顔を上げた。

隣の後輩も、驚きを隠せず細い目をがんばって見開いていた。


 ───またか。


そんな思いで腰を上げようとしたとき、すぐ近くにいた先輩が、細い人差し指を口元で立てた。


「……申し訳、ありません」

 そう頭を下げたのは、同期だった。