粉雪-3年後のクリスマス-

 どうやらその番号をしらべていても時間的にあの約束の日に間に合いそうにない。

そっちは後回しにしてもらうことにした。


たとえそれが、彼女と直接結びつかなくとも、わずかなヒントにでもなればいいのだから。



「では、お客様の携帯番号の、以前の持ち主をお探しいたしますね。
情報がそろい次第──」

「あの……!」


 遮った俺の声に、オフィス内もしんと静まる。

こんなに積極的になったのは、いつぶりだろうか。


「あ、あの…、何か一つでもわかったら教えてほしいんです…」

「……正確な情報ではないんですけど…」


 驚いているのか、言葉に詰まらせて確認してくる。

そんなことは覚悟の上。


「いいんです。自分でも、確かめたいんです」


 何かしていないと、また落ち込んでしまう気がして。


「……わかりました。ご紹介のお客様ですし、ご希望に添えるようご依頼承ります」

「よろしくお願いします!」


 俺の意を汲んでくれたことがとても嬉しくて、いつの間にか、頬は緩んでいた。



 机の上を簡単に片付けエレベータでロビーまで降りると、そこには退屈そうにソファに腰掛ける同期の姿。

俺が出てきたのを確認すると、白い歯を見せて笑う。



「んじゃ、行きますか!」


 こいつは酔っ払うと絡むんだよな。

なんて思いながら、結構、俺もその気になっていた。


「……はいはい」



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