粉雪-3年後のクリスマス-

 カノジョ一人幸せにできない俺に、なにができるかわからない。

けれど、傷つく人が一人でも減るならば。


 今は、それでいいと思う。



 同期からはとにかく残業を終わらせろ、と命がくだされ、俺は必死にこなした。

ようやく目途が立つころ、席を外していた同期が戻ってきて、ひとつの名刺を渡してきた。



「ここ、名前言えばわかるから」


 下で待ってるわ、と添えた同期は、そのまま暗い廊下に消えていった。


ゴクリとつばを飲み込み、震える指でボタンをひとつずつ押していく。


 電子音が鳴ったと思ったら、すぐつながって俺はとにかく驚いた。

そして言われたとおり、電話で名乗っただけなのに、


「話はうかがっています」

と、あいつの仕事の早さがうかがい知れた。


 調べてほしいことと、今俺が持っている状況を簡単に説明する。

すると、まるで目の前にいる見たく「情報ありがとうございます」と、丁寧に聞いてもらえた。


なんとなくホッとしてしまったことに気づいて、自分の電話対応を見直さねば、とひそかに省みてしまった。


ちなみに掛かってきた番号についても尋ねてみたが、

「おそらく、海外のものですね。
国外ですとお時間がもうすこしかかりますけど?」


 想像していなかった答えに、絶句した。

日本語の女の子だったし、どこか地方の番号かとばかり思っていた。



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