粉雪-3年後のクリスマス-

 彼女は、どうしているのだろうか。

「なあ、間違い電話を取ったらどうする?」


 気付いたら、そう口にしていた。

手は動いていたけど、なんだか時間が止まったような感覚だった。


「は?クイズ?」

「見知らぬ番号からかかってきて。電話を取ったら聞いたこともない声で、約束させられたら……どうする?」


 聞き返されているのに、止まらなかった。


 ───彼女は“誰”に会いたかったのだろう。


「なんだよ、やけに状況がリアルだな」

 そんな同期の引きつった顔と言葉に、一気に現実に戻る。


俺は何をしたいのか、よくわからなくなっていた。


「……ただの、“間違い電話”の話だよ」


 そう。

彼女が口にした『大観覧車』も『クリスマス』も。


『好き』の言葉も。



ただの、間違いなんだ。



 カタカタとキーを打ちつける音が耳障りで、なにか話してほしかった。

そして、ようやく同期の口が開いたのを視界に捕らえ、ゆっくりと向き直る。




「だったらさ、調べてみろよ」


 ───は?


 そんなこと言われるだなんて思わなかった。

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