自分のデスクを通り越して、課長の席の前に到着した直後だ。


「この馬鹿者！」

　課長に呼び出しを食らうときは、たいてい怒られる。

いや、自分のミスなんだけども。


しかし、今回ばかりは少し事情が違う。


「……申し訳ありません」

　俺にも配属されて半年経つ後輩ができ、彼の教育係を請け負っている。

任せているのは、そんな時間のかからない日常業務なはず。


　けれど、後輩はその仕事すらもミスをしたのだ。


「なんでこんな書類ひとつ、作れないんだ！」

　俺としては、そっくりそのまま後輩にいってやりたい。

という言葉をぐっと飲み込み、素直に頭を下げる。


「すみません、彼ならできると判断した私が甘かったです」

「まったくだ！」

　今の課長には、何を言っても聞き入れてはもらえない。

ここはおとなしく、自分の非を認め、迅速に対応することが求められる。


「すぐ作り直します」

「当たり前だ！」

　早々に課長にもう一度頭を下げ、デスクに戻る。


　俺が入社半年にはもう１人でやらされ、間違えたら俺が怒られていたというのに。

上司は、俺を怒ればいいと少なからず思っているのだろう。


　はっきりいって、後輩が伸びない要因になっていることをそろそろ自覚してほしいところだ。


「ユキさん、おはようございます〜」

　間延びした彼独特の話し方で登場したのは、噂の後輩。