ぷっくりした唇は、意を決したように開かれる。


「ユキ、じゃあね…」


 まるで嵐みたく心は荒んでいたのかもしれない。

ただ追いかけることも、引き止めることもできなくて。


 少し気の強いカノジョは……



「───また、フラれた…」


 どうやら優柔不断な俺に愛想をつかせたらしい。


 心も冷え切る冬が到来したというのに、さらにひもじくさせるというのか。

コートのポケットでぎゅっと拳を握り、冷たい空気をさえぎるように体を縮こまらせた。


本当は、それだけではないはずなのに。




 仕事を終わらせて、今日もカノジョとデート。

もうすぐクリスマスだし、今年のプレゼントは何にしようかな。


そんな風に思っていた矢先の出来事で、どこか思考回路は千切れたままだった。



「三年……だもんな…」


 カノジョとは、友人の紹介で知り合った。

気が強いくせに涙もろくて、大雑把なのにヘンなところで妙に細かかったり。


そんな姿に、俺はいつしか惹かれていた。


 けれど、そのカノジョの笑顔はもう振り向かない。

先ほどコートを翻し、近くで見守っていたスーツ姿の男と寄り添って俺の前から姿を消した。


そんなことにすら気づけなかった俺は、相当、情けないのだろう。