「動くな、一色」
後ろからの声に櫂斗と一色は
固まった。
首だけを動かして
後ろを振り返る。
若い男が2人、こちらに向かって
銃を構えていた。
「銃を捨てろ」
少し前にいる男が
一色に命令する。
「はい、そうですかって素直に
聞くと思うか?」
「外にも仲間がきてる、
無駄な抵抗はやめろ」
「…動けばこいつを撃つ」
怯むことなく一色は言い放った。
動く事のできない緊迫した空気が
辺りを包む。
広間が不気味な静寂に
支配された。
「女をよこせ」
不意に一色が玲に命令する。
その言葉に玲だけでなく
櫂斗も目を丸くした。
玲の腕の下から引きずり出すように
一色は棗を引っ張り上げた。
銃口をピタリと自分に向けられた
玲は呆気なく棗を奪われる。
無理な体勢で引かれた棗は
苦しげに顔を歪めた。



