呆然と母を見詰めかえしていた田所が、やがてポツリと呟いた。


「俺…父親になるの?」


 母がコクリと頷くと、田所は力一杯母を抱きしめ、


「まじ?すげー、俺が父親? やったなぁ海晴!」


 と言って、子供のようにはしゃいだ。


「生んで…いいの?」


 恐る恐る母が尋ねると、


「バカか?お前… 」


 田所は少しムッとして言い、それでもすぐ満面の笑みを浮かべ、


「結婚しよう、海晴。俺と…


 結婚してください!」


 そう言って、母を再びきつく抱き締めた。




 この時の二人は…


 この幸せが永遠に続くと信じて疑わなかった。