「増田、お前遅いぞ」
刹那さんはそう言って、席に着きなおす。
「今、何してたの?」
「何って?…リンゴの剥き方教えてたんだよ」
いや、刹那さん…たぶん先輩はとても大きな勘違いをしていると思うんだ。
だってあの体制は…ちょうどドア側から見ると…。
「今……その……」
「なんだよ」
先輩…言いたそう!だけど、キスという言葉を使い慣れてないから?言いにくそう。
先輩出来れば言わないで!!
私には伝わってるから!!!!!
「キス……してたよね?」
そこで言ってしまうのが先輩だよねー!
「はぁ?誰が?」
「柳下君が…」
「誰に?」
「瑠華……ちゃんに」
……一瞬の沈黙の後、刹那さんが高笑いをした。
「ははは!!」
「何笑ってるの、柳下君!俺は本気で!!」
「いや、あの先輩、誤解ですよ!」
「瑠華ちゃんまで……」
「あー…笑った笑った。久々に笑ったぞ、増田」
刹那さんは、涙を拭きながら先輩に近づいた。
いや、刹那さん笑いすぎ。
先輩が少しかわいそう。
「そっか、そっか!あの時か。わかったよ、誤解解いてやるからちょっとここ座れ」



