運転しながら、うれしそうに話す久美子。


「お母さんが一緒じゃなくて、
 残念ねー。また、
 いろいろ話したかったんだけど」


「はい…………」 


うつむいて自分の手を見ている綾。


「恵ちゃん、元気にしてる?」


「はい…………」


「でも、恵ちゃんも大変よね。
 お母さん、あっ
 あなたのお祖母さんが
 亡くなって、
 お兄さん、あなたの叔父さんも
 亡くなっちゃって、恵ちゃん、
 帰る所が無くなって、
 ”ふるさと喪失だ”
 なんて、言ってたわよ」


久美子は、嬉しさのあまり、
綾の事は無視したかのように、
話し続けた。


「はい…………」 


しかし、相変わらず綾はうつむいたまま。


「で、この前、ここに帰ってきた時は、
 私の所に泊まったの。
 私、独り者だからねっ、気楽なのよ。
 久しぶりだったから、
 積もる話もいろいろあってね、
 夜遅くまでいろいろ話したの」


「はい…………」 


綾は相変わらずうつむいたまま。

綾の反応の薄さに、久美子は、
綾のほうをチラッと見て、
また運転を続けた。