「好きな人を見ると、逃げちゃうんでしょ?」 「……え、あ……」 顔に熱が集まる。 恥ずかしい! 先輩は、最初からあたしの気持ちが分かってたんだ!! そう思った瞬間、再びあたしは逃げだそうとした。 でも部屋のドアを開ける前に……。 ドンッ 顔のすぐ右には先輩の手があって、左手はドアノブを引き戻していた。 「逃がさないよ」 本日二回目の言葉。 もう彼から逃げられない。 「今日は大切な日になるんだから」 「……た、大切な日?」 「さて、そろそろ聞こうか。なぜ逃げるのか」