「へぇ、ドラマの話が振ってきたんだぁ。凄いじゃない」

 「まぁ、これも私の実力よ」

 「あら、正体を隠し通すのに協力しているのは、アタシよ」

 「感謝しています」

 「あのさ、学校じゃないんだから素で話してよ。キモイ」

 俺の完璧に作り上げたものが、キモイだと!?

 確かに、性格まではまだまだだけどな。

 今、梨乃の部屋で雑談中。

 コイツだけが、学校の中で唯一俺が男でありながら女性アイドルをしていることを知っている。

 見事に変わった俺を一発目で見抜かれたしな。

 さすが幼馴染だな。

 今は彼女か。

 街で普通にデートも出来る。

 世間様はTUBASAは売出し中の女の子と思っているから、俺が堂々と男になればバレない。

 けど、梨乃の友達とかに家は何処だとか聞かれて、実家を教えた次の日は待ち伏せだし。

 男の格好で寮に戻る事も出来ない。

 なんかさ、色々面倒になってきたから特別な用事でもない限り、部屋の中で大人しくしているのが一番、って気がついた。

 女の子の気持ちとか分かんねぇし、こうして相談をかねて、梨乃の部屋にお邪魔している。

 建て前上は親友。

 強制的に彼氏とされても梨乃を女としてドキドキしたりはしない。

 まぁ、何も望んでこないから、俺的には幼馴染の延長って感じで凄く楽。

 「で、誰と共演するの?」

 「月岡 舞と桜小路なんとかって言ってたかな」

 此処まで有名な奴だから、俺だって知っている。

 「桜小路 ヒカル?」

 「あぁ、それそれ」

 だが、男には全く興味がないのも事実。

 「見る!! アタシ、そのドラマ欠かさず見るよ」

 「見るな」

 それに、チョイ役だし。
 主演を演じる月岡 舞の友達役。

 ようは彼女の引き立て役だな。

 俺は、それでも十分なのだが、事務所の奴らは不満らしい。