ジャーン!!


 「まぁ、可愛い。ツバサはキュート系決まりね」

 木崎さんは、瞳を星のようにキラキラさせ、手を組み本当に嬉しそう。

 これって、喜んでいいのだろうか?

 「あ、ありがとうございます」

 心の疑問に反して、口が勝手に動いていた。

 どんな姿であっても、誉められて嬉しくない奴はいないだろう。

 何度も言うが、俺は男なわけで……。

 けど、確かに鏡に映った自分は、何処からどう見ても女の子。

 ボーイッシュなんかじゃなく普通に女だ。

 ミニスカートの下から覗く生めかしく、ほんのり小麦色の足。

 フリフリのチュニックとかいうやつにショート丈のベスト。

 スタイリストさんに手入れをしてもらった顔。

 その姿を見て、頬の色が紅く染まっていく姿が鏡に映っている。

 「ね、可愛いでしょ?」

 今、これが鏡ではなく生身の奴だったら、間違いなく恋に落ちた。

 ありえねぇぇぇぇぇ!!



 更に月日が経ち、今に至るってわけよ。

 もちろん百合愛にエスカレート。

 勉強は嫌いじゃないからそれなりの成績であがる事が出来たわ。

 どうよ。言葉も少しは女らしくなったかな。

 そして、今は雑誌の表紙は当たり前。

 やるからには徹底的にやるのが俺……私の主義だからね。

 しかし──。

 「翼、今日も来てるわよ」

 「じゃ、アリバイろしく~」

 「ちょっと~、待ちなさいよ。何でアタシがアンタのアリバイを作んなきゃならないのよ!!」

 「彼女であり、親衛隊隊長だから」

 キーキー怒る梨乃を尻目に教室から移動する。

 悪いな。

 俺、あいつらだけは苦手なんだ。

 まだ、ファンと名乗る人の方が可愛い気がある。

 私生活を暴かれたら、生き恥もいいところだろ?

 否、既に男を捨てた時点で生き恥を背負っているのか。