荷物、家に届いているし同姓同名ってだけじゃないよな。

 頭がクラクラしてきた。

 だ、だってそこは男子禁制の女子学院。

 しかも、エスカレーター式。

 俺は、健全な男なわけで……。

 記憶を辿る。

 俺、あの時ズボン穿いていたよな。
 ……おネエ言葉なんかなんかで話していないし。

 唯一つ、俺の致命的なことがあったとすれば、男にしちゃ低い身長とまだ声変わりをしていなかった事。

 あのプロダクションの奴が勝手に俺を女だと思ったのか、それとも男と知っていての嫌がらせか。

 「母さん、俺この話断る!!」

 「ダメよ。契約金全部使っちゃもの」

 「はぁ!?」

 って、一体いくら貰っていくら使ったんだ!?

 「か、母さんも知らなかったんだよ。この際だ、アンタは男を捨てて絶世の美女目指すんだね」

 開き直っているし……。

 仕方なく覚悟を決め、否人生を諦め牢獄に入るつもりで聖百合愛学院に入る事にした。



 「今日から転入してきました、葛上さんです。皆様仲良くしてあげてくださいね」

 「「はい」」

 礼儀正しく座り顔だけを俺たちのいる教壇にむけ、笑顔で答える聖女達。

 こんなにも視線を向けられると居心地が悪いものだな。

 俺も挨拶を交わし席に案内された。

 隣を見ると彼女もまたこっちを見、いきなり吹き出さられた。

 感じ悪い奴。

 「翼でしょ?」

 「えっ!?」

 俺を知っている?

 そんなバカな。此処は学区内でもなければ、近隣域でもない。

 「アタシよ、梨乃。槇原梨乃(まきはら りの)」

 俺の心の質問に答えてくれた。
 
 ……どうして梨乃が!?

 彼女とは幼馴染って奴だ。だが、南の地へ引っ越したはず。