後日、俺と梨乃は揃って木崎さんに呼ばれた。

 やっぱり、あの時全てバレちゃったのかな?

 「二人揃って主演だよ」

 それは、全く想定していなかった言葉だった。

 「ツバサ、あなた宝塚に行ったらどう?」

 「へっ!?」

 「ほら、この間のVTR。桜小路よりカッコイイしね」

 そう言うなり、木崎さんの指は再生ボタンを押す。
 そこに映し出されたのは、バックアングルだけど、俺たちが密かに育んだ──。
 
 か、カメラ……回ってた? き、気付かなかった。

 「これ、いいよ。放送的にも問題ないからね」

 後ろ姿だから誰かは分からないが、俺たちは赤面してしまった。

 「「だ、駄目!!」」

 俺だけならともかく、全国版で梨乃を……。

 「それに、私……学校……」

 そうだよ。梨乃を退学になんてさせられない。

 「それじゃ、二人で桜小路を説得出来る?」

 「説得?」

 「そう。彼ね俳優辞めるんですって。精神的にショックな事があったって言っていたわね」

 それは、俺の責任だけど。

 「断ります」

 「なら、決まりね」

 おぞましくも、ウインクをして梨乃までも引き込んでいる。

 この事務所の中から主演が、しかも二人出たことが嬉しいらしく、いつにないお祭り騒ぎ。

 ……はぁ。

 未々、私たちは世間様を騙して行くようです。

 多分。


『Fake☆鏡よカガミ』
一先ず終わり。


2009.12月中旬

花穏