俺は、男である証をコイツに握らせた。

 これでも女に見えるか!!
 濁り湯と涌き立つ煙に包まれているお陰で?

 スタッフの目に俺の代物は映っていないようだ。

 桜小路は口から泡を吹き、そのまま湯の中に沈んでいった。

 カメラマンをしている大男の熊田さんが、彼を抱えていった。

 「やれやれだな」

 「やれやれじゃないわよ、自分からバラしてどうするの!?」

 ……何も考えていなかった。

 「まぁ、守ってくれて、ありがとう」

 「あのさ──」

 「翼、消毒してくれる?」

 えっ!?

 それって……。

 俺がポカーンと梨乃を見ていたら

 いつもはポーカーフェイスな梨乃からkissをしてきた。

 もうダメ。

 ……女に戻れねぇぞ。

 俺たちは濁り湯の見えないところで、愛を育んだ。

 梨乃、お前最高に良い女だな。