今まで梨乃を、異性として見ていなかった。

 しかし、零れる吐息と昇天する甘い声を聞いているうちに、もっともっと彼女を俺の中に埋めたい。

 そんな欲情が涌いてきた。

 初めは、桜小路にされた感触を消毒代わりにしたかっただけ。

 けど、今は違う。

 この唇を、梨乃の唇を誰一人にも、奪われたくはない。

 そう強く心想いながら舌を絡めていった。

 梨乃もまた、俺を求め絡み返してきた。

 それを合図に俺は、右手を背中に回し、左手で服の上から胸を鷲掴みにした。

 その手をゆっくり滑らすように下げ、スカートの中に忍ばせる。

 秘部を下着の上から撫でると、梨乃の声も桃色に変わっている。

 俺はやっばり男だ。

 こんな格好して女として生活しているから、本当の自分を忘れそうになる。

 けど、この快感までは失いたくない。

 梨乃、今までお前を雑に扱ってごめん。

 お前が欲しいよ。

 こんなにも愛しい人が、こんなにも近くに居たなんてな。

 けど、今日は止めておくよ。

 もっとお前を大切にしたい。


 「──ん。もう、変な気分になったじゃないのよ!!」

 ほんの少しの隙に、梨乃は俺から離れ、唇をとんがらせ怒るように口走った。

 可愛かったから気にしないことにしよう。

 「ごめん。それから、ありがとう」

 「今日は変な翼ね。まさか頼みが愛を育みたいなんて生易しいものじゃないでしょ?」

 ハハッ。
 さすがだな。

 俺の心の内を全て知っているかのようだ。

 「実はな──」

 「え~っ!?」