外国に来てしまったのか、と思う程の広さ。

 ふんわり漂う香りが、心を落ち着かせてくれる。

 天井にはシャンデリア、街の夜景が一望出来る、大きな窓。

 此処って……。

 「スウィートルームだよ」

 それは見れば分かる。

 ただ、此処を案内される理由が分からない。

 「今日は、この部屋を君にプレゼントしようと思ってね」

 「もったいないです」

 皮膚が逆立ってきたよ。

 鳥肌というよりハリセンボンのようになってきたし。

 もし、私の考えが間違いでないのなら──。



 ジリ、ジリと、桜小路との距離が縮まる。

 少しずつ後退りするものの、壁が邪魔してそれ以上は戻れない。

 「怖がらなくていいさ。これから俺たちは恋人を演じるのだから、親睦を深めるだけさ」

 桜小路の左手が私の顎を捕らえ、右手で私の身体をスッポリと包まれた。

 ま、待て。

 私……俺、男!!

 しかし、抵抗する事も心の叫びを放つ事も出来ず

 俺と同じフェロモンの奴にネットリ絡み付くkissを交わされた。

 嗚呼、俺のファース.トキスは哀れなり。

 どうする!!

 このまま蛇に捕らわれたままだとこの先は──#×☆※

 
 「あ、あの……」

 「美味しいデザートはこれからだよ」

 俺、そんな趣味ないし。

 「すみません、家門限があるんです」

 「そんなの破るためにあるのさ」

 寮長怖いんだからな!!

 「そんなに焦らなくてもずっと一緒に撮影するわけですから……」

 俺、今墓穴掘ったかな?

 「そうだね。この部屋はいつでも君の為に開けておくからね」

 何も言えない。

 こんな台詞を、いったい何人の女性にしているんだか。

 とりあえず、それ以上の展開にならなくて良かったよ。