「で、台本は見たかな?」
「はい、一通りは」
考えすぎかな。
いきなり仕事の話しになっているし。
「さすがだね。良い展開になると思わないか?」
どこがよ。
私にとって、最悪な展開にしか思えない。
どうやって問題のシーンをすっ飛ばそうか、思案中だというのに。
しかし、甘いマスクの下はチャランポランな奴かと思っていたのに意外にも? 仕事熱心という感じに伝わる。
コイツなら、信じても平気ね。
頼れる兄貴のように思えてきた。
食事もメインディッシュを終え、そろそろテーブルも寂しくなってきた。
私は知らなかった。
この兄貴のような仮面の下の桜小路の正体を。
「さて、食後のデザートとしますか」
どんだけの食欲なの?
「さぁ、ここから出よう。」
あれ?
デザートは?
まあ、要らないけどね。
わけの分からないまま、桜小路の後について行った。
「桜小路様、お部屋のご用意が出来ております」
「いつもありがとう」
ホテルマンらしき人が、カードのようなものを渡して去って行った。
そして、案内されたところは──。