「君が舞の代わりを務めるんだって」

 「は、はい。不慣れですが頑張ります」

 「ヨロシク」

 爽やかにニカッと笑うこの人こそ、相手役を演じる桜小路。

 世の女性たちは、このスマイルに酔いしれるのだろう。

 しかし、同じフェロモンを出す私には、不気味さを感じる。

 「ツバサちゃん、念入りな打ち合わせをしたいんだ。この後時間取れるかな?」

 「はい」

 「それじゃ、この近くのスカイホテルで食事でもしながら打ち合わせよう」

 やっぱり一流ともなると食事どころも違うのね。

 私も桜小路という人物を知るのに良い機会ね。



 打合せというより、ディナーショーでも開かれるような雰囲気。

 眠気を誘うような、クラシックがゆったりとBGMに流れている。

 それに合わせ運ばれてくる料理たち。

 普段お茶漬けをサラサラ食べている私には、落ち着かない。

 「いつもこういった処で食事をなさるのですか?」

 「今日は特別。今、世間に注目されているツバサちゃんにお近づきになれたお祝い」

 今、寒気に襲われた気がする。

 「そ、それはご丁寧に……ありがとうございます」

 何故だ?

 まるで蛇に睨まれたように、視線を捕らえられてしまった。

 コイツの瞳に吸い寄せられそう。

 こ、これって、かなりマズイ展開になるのでは!?