「はい?」

 私の耳は確かなのか。

 「だからね、舞さんが怪我してしまって、次のシーンの撮影が出来ないのよ。」

 「えっと、それは?」

 主演が撮影不可能ということは、撮影中止?

 = ドラマの話もパァ?

 「代役をたてる時間もないから、そのシーンを──」

 オーディションを開く時間がないから、代わりを私が行うらしい。

 そりゃ、後ろ姿はソックリと最近よく言われる。

 それに、台詞だって頭に入っている。

 け、けど──。

 「大丈夫よ、湯煙の中だから、ハッキリ顔を見られないから……ね」

 湯煙……つまり、入浴シーンってわけだよね。

 顔は別に構わない。

 問題は、私の体が、女の作りではないということ。

 おそらく、月岡 舞の怪我は嘘だ。

 顔は騙せてもラインは騙せない。

 そうだ。

 こうなったら、あの手しかないわね。

 それは究めて困難な事。

 確率も非常に低い。

 けど、今この時点で己を全てさらけ出すわけにはいかない私にとって、必死の策。

 成功……するかな。

 ううん、させなくては。