ホッとしたのも束の間、あたしは病室を出てナースステーションに向かった。
すぐに看護師がユーヤの主治医を呼び出し、あたしは別室に通され説明を受けた。
「脳に損傷はありませんでしたが、今はまだ覚醒しきれていません。記憶があいまいになることもまれにありますが彼の場合、そのは心配いらないでしょう」
「どういうことですか?」
そう聞き返すと、主治医はずり下がった眼鏡をクイッと上に持ち上げた。
「目が覚めた時、看護師にあなたの名前を言ったそうです。それで看護師があなたに連絡を」
医師の言葉に再び目頭が熱くなり、あたしはタオルで目を覆った。
「後日再検査をして経過をみます」
「……よろしくお願いします」
あたしが深々と頭を下げると、主治医は大きく頷いた。



