「ちょっと出かけてくる!」


「ちょっと、もうすぐ試験でしょ?どこ行くの?」


「ユーヤのところ」


玄関先で靴を履き替えているあたしを見て母は一度間を置きこう言った。


「木下君のところ……?」


「……そうだけど……」


「アリサがひったくりにあった日、木下君がうちに来たって言ったわよね?」


「聞いたけど……。どうしたの急に?」


「お母さん木下君に、アリサは九州に行くからこれ以上仲良くしないでって……言ってしまったの」


「え……?」


「今更後悔してるの。あんなこと言うつもりじゃなかったのにって……。お母さんね、どうしてもアリサと離れるのが嫌だったのよ。今更かもしれないけど……木下君に謝っておいてくれる?」

母がユーヤに釘をさしていたなんて知らなかった。


もし知っていたら……


そんな考えが思わず頭をよぎる。