「……何でもないから」 「何でもないことないはないですよ。だって今泣いてるんだから……」 「早く戻ってあげなよ……」 早くさっきの女の子のところに戻ってあげて。 あたしのことなんて構わないで。 気に掛けてもらえていると、いらない期待を抱いてしまう。 「アリサ先輩」 子供をあやすように優しくそう言うと、ユーヤはあたしの両手を顔から離した。 「……見ないで」 きっとあたしは酷い顔をしている。 目の下はマスカラとアイライナーで真っ黒になっているだろう。