柊さんにお礼を言うと、あたしは玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「おかえり。遅くまで大変だったわね。ご飯は?」
「今日はいいや。お腹すいてないし」
リビングから顔を出した母にそう告げるとあたしはすぐさま二階の部屋に向かった。
鞄を置き、ベッド上に仰向けに寝転がる。
目を瞑ると、久しぶりに見たユーヤの笑顔が蘇る。
その笑顔をずっと夢に見ていた。
この一カ月、夢でしかその笑顔を見ることは出来なかった。
でもその笑顔を目の前で見てしまったあたしは封じ込めようとしていた熱い想いを抑えることが出来なくなった。



