「じゃあ、何で別れたの?」


「全部あたしのせいです……。あたしが彼を信じてあげられなかったから」


「ふぅ~ん。何かよく分かんないけど、俺のことも少しは考えてよね?」


冗談っぽくそう言った後、柊さんは再び足を進めた。



柊さんは強引な人だ。


でも、人の気持ちに土足で踏み込んできたりはしない。



「柊さん……あたし……柊さんの気持ちには……」


「応えられないとか、なしね?まだ分かんないじゃん。人の気持ちなんて変わりゆくもんだしさ」


一歩前を歩いていた柊さんは振り返りながらニコッと笑った。


電灯の光で柊さんの口と鼻のシルバーのピアスがきらっと光る。


「ねっ?」


そう念を押した柊さんに負け、あたしは思ってもいないのに小さく頷いた。