「佐和さん」 すると、背後からあたしの名前を呼ぶ声がした。 「山登り頑張ろうね」 杉崎君はあたしの元に駆け寄ると、ニコリと笑いながらそう言った。 「そうだね。すっごいめんどくさいけど」 「うん。でも、俺は全然めんどくさくないな。むしろ楽しみ」 「……楽しみ?杉崎君ってもしかして、登山マニア?」 「違うよ。佐和さんとペアだから」 え……? 杉崎君の言葉に何故か心臓がドクンッと不快な音を立てる。 すると、その時ふいに頭のてっぺんを誰かに叩かれた。