16
 俺と千奈美は互いに納得が行くまでキスし合った後、抱き合う。


 彼女が付けていた香水の香りが辺りにそこはかとなく漂っている。


 俺が抱く手を強めると、千奈美が、


「もうそろそろ行かないと」


 と言って、部屋出入り口に向け歩き出す。


 俺はカップに注がれていたコーヒーを啜り終えると、彼女の背中に向かって、


「俺も今日は仕事だからな」


 と言い、独り出社の準備をし始めた。


 ベッドサイドに付いているラジオで、さっき聞いていた天気予報では、今日の関東地方は一段と冷え込むと言っている。


 俺は洗面所で歯磨きをして、石鹸で洗顔する。


 その後、スタイリングムースを付けて綺麗に整髪した。


 書類などが入ったカバンを持って、ゆっくりと歩き出す。