10
「あ、浩介さん?」


 ――ああ。今取り込み中なんだよ。……急用?


「いや。別にそういうわけじゃないんだけど、声が聞きたくて」


 ――じゃあ、今夜六本木に来ない?


「六本木まで?」
 

 ――ああ。いつも付き合いで飲む店があるんだ。そこでゆっくりビールでも。


「帰りはどうするの?」


 ――そのまま、タクシーで帰ればいいじゃん。俺がタクシー代ぐらい出すからさ。


「ホントにいいの?」


 ――ああ。君も覚えておくといいよ。金は使うためにあるってね。


 俺は基本的にバサラの身だったから、愛人に飲み代や高額のタクシー代ぐらいは余裕で出せた。


「じゃあ、お互いお仕事が終わる時間に合流しようか?」