そのときだけは古雅や高橋など、嫌な部下たちの顔も忘れられるし、優紀子のことも心の片隅から外れるからだ。


 俺は肉を切っては、口へと運んで、昼食を存分に堪能した。


 今が午後一時前だから、午後三時の定例会議まで二時間近くある。


 俺は会議の内容を頭の中でシミュレーションしながら、同時に香原財閥に養子として入る可能性が高い、大磯健介のことを考え始めた。


 果たして自分の嫁の実家である香原財閥がこれで息を吹き返すのか……?


 それとも、単に形式的に養子を取るだけなのか……?


 俺は食事しながら、そればかり考え続けた。


 財閥には財閥でいろんなことがあるのだ。


 一見単純に見える冠婚葬祭の類も力学とすらなりかねないのだから……。