俺は大磯健介とは一度も会ったことがないし、これから先も会うつもりは一切ない。


 第一、信太郎の時代から続く今井商事の社長の俺と、健介は全く面識がないのだし、彼は俺にしてみれば若すぎた。
 

 一人娘の優紀子が家を出てしまったので、洋平は是が非でも跡継ぎを見つけたいのだ
ろう。


 たとえ、それが懇意にしているとはいえ、他人の家の出来のいい息子だったにしても……。


 俺はそんな取り留めのないことを考えながら、最上階からは東京湾が見渡せる今井商事の自社ビルへと入っていく。


 先のことを考えても無駄だと思いながら……。