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「マスター、ご馳走様」


「ああ。またよろしくね」


 深田が俺の言葉に応じると、俺はゆっくりと立ち上がり、店のレジへと向かった。


「お連れさんのコーヒーも合わせて、一五三〇円」


 俺が財布の札入れから万札を一枚無造作に取り出し、深田に手渡す。


 お釣りを受け取って、再び六本木の目抜き通りへと出た。


 スルプから南にわずか数分歩くと、俺の会社がある。


 千奈美は普段新宿で働いていて、今日もすでに身支度を整えているので、出社するだけだった。


 六本木駅から新宿方面の都営大江戸線に乗るつもりなのだ。


 一歩一歩踏みしめるようにして、地下鉄の駅へと歩き続けている。


 俺たちは六本木でも一番の繁華街にある場所で別れた。


「浩介さんもお仕事頑張ってね」