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 千奈美が淹れてくれたホットコーヒーのカップを受け取った俺は、飲み始めた。


 彼女も目の前で湯気が出ているコーヒーに口を付けている。


 俺たちは目が合うと、視線を逸(そ)らさずにいた。


 これが優紀子とだったらどんなに嫌なことか……。


 俺は自宅マンションに帰宅することに正直なところ抵抗を感じていた。


 だが、かといって、ホテル泊まりをし続けるわけにはいかない。


 俺はあえて夜の遅い時間帯に帰宅していた。


 まるで自分の家なのに、優紀子と会うのを憚(はばか)るかのように。


 そして俺と千奈美は愛情が深まっていく。


 互いの関係がこの秋空のように清々(すがすが)しい。


 俺たちは手荷物を纏(まと)め、揃って部屋を出ると、ホテルのフロントにキーを返して、チェックアウトした。


 ホテル前にはタクシーが数台停まっている。