独りよがりで経営を続けていたら、社員と社員の家族たちに迷惑が掛かってしまう。


 俺はそう思っていたから、何よりも真剣に時代の流れを読んでいた。


 何かと不透明な時代である。


 どんなことがあるか分からないぐらい市場は流動し続けていて、まるで先が見えなかった。


 だが、そういったときだからこそ、俺は変革期のリーダーとして会社を経営していきたい。


 確かに今井商事は亡き信太郎がたった一代で作った会社だ。


 未だに業界では新興勢力と目されているのかもしれない。


 俺は今になって信太郎が築き上げた企業の看板――いわゆる信頼関係というやつだが――に感謝していた。


 意見が合わなかったことも多々あったが、今考えてみれば、そういった事柄はもう過去のことである。


 俺は信太郎が作り上げた、国内はおろか、諸外国の企業との取引に頼らざるを得ない。


 そして終わってしまった優紀子との結婚生活もいずれは思い出になるだろうなと踏んで