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 優紀子の葬儀が終わり、俺は霊柩車に乗って火葬場まで行った。


 すれ違いが続く、互いに自分勝手な夫婦生活において、俺も優紀子もダブルで不倫していたのが事実だ。


 そう言えば、優紀子の葬儀に不倫相手の猪原誠は結局来なかった。


 どうせあの誠とかいう人間も所詮は勝手なやつだったんだろうなと思う。


 俺は優紀子の遺体が焼かれるまで火葬場の待合室で待った。


 待つ間、今は今井商事の傘下にある香原財閥関係者が「浩介君、大変だったね」とか「再婚する気はないのかい?」と問うてきたが、俺はそういった妙な発言に関しては上手くかわす。


 優紀子はもうこの世にいないのだ。


 これから俺の新しい人生が始まる。


 俺自身、千奈美と一緒に暮らすつもりでいたし、もう不動産会社にも品川に2LDKぐらいのマンションがないかどうか、探してもらっている。


 つまり俺は別に困らないのだった。