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 俺は自宅前からタクシーに乗り、目黒でも外れにある、優紀子の遺体が安置された病院へと向かった。


 さっき大森に電話を掛けたとき聞いたのだが、昨日の時点で今井商事の株はかなり値上がりしたようだ。


 やはり香原財閥と大磯グループの株式を取得し、経営に弾みが付いたからだろう、市場でも好感を得て、高騰し続けているようだった。


 俺は優紀子の葬儀が済むまで、大森に社のトップの任務を任せる。


 そして千奈美とは欠かさず連絡を取り合い、春頃からの新婚生活に向けていろんなことを協議するつもりでいた。


 入籍の手続きの件、新居の件、家具や家電製品など生活必需品調達の件……、考えるだけで頭がパニックになるぐらいたくさんある。
 

 だが、考えれば考えるだけ嬉しいのだ。


 俺は千奈美を愛せているのだから……。


 この愛情に嘘偽りは一切ないと思っていたのだし……。


 新居の候補地としては品川がいいと思っていた。