ビールの苦味が互いの口の中に残っていて、俺も千奈美もそれを感じ取り、思わず表情が変わる。


 この十一月という季節は急速に冬へと移り変わる頃だ。


 俺たちは部屋に暖房を利かせて、遠慮なしに抱き合う。


 明日からもまた仕事に追われる俺にとって、この抱擁(ほうよう)の時間が一番いいのだった。


 何にも替え難いぐらい。