空をなくしたその先に

「何でそれ持っているのよ!」


旅券目的で偽装結婚したあの時の証明書。

書かれているのは偽名で、もちろん拘束力などないのだが。


「いつか使えるかなと思って」


悪びれず、ミーナはそれを折り畳んで大切にしまい込む。


ルイーナから持ってきたのなら、もっと早く出せばいいのに。


「ディオは関係ないでしょう!」


悲鳴にも似たダナの声が響きわたった。

その声は、ビクトールの家へと向かっていたディオの耳にも届いた。

自分の名が叫ばれているのに気がついて、そちらへと足を運ぶ。

小さな家の前に立っている後ろ姿はビクトールのものだ。

そしてその向こう。

窓越しにビクトールと向き合っている赤い髪の女性。

ディオは足を速めた。

一番最初に気がついたのはミーナだった。


「あら、ちょうどよかった」

ディオに向かって笑顔で手をふる。

なぜミーナがここにいるのかと、ディオは混乱した。