空をなくしたその先に

夫と義弟が犯罪者に転落する可能性がなくなったのがありがたいと、

ミーナはアーティカに移ってきたことを喜んでいるようだ。


「それで何をしたの?」


テーブルに温かなお茶とビスケットが並べられ、
好奇心を両の瞳にきらめかせてミーナは話を切り出す。


「後ろに乗せて飛んだだけよ。
あたしと結婚したかったら、そのくらいしてもらわなきゃ」


お茶を注いだミーナは、小さな笑いをもらした。


「どうせまた吐くまでめちゃくちゃな飛び方したのでしょ」

「普通に飛んだだけ……あたしにとってはね。

結婚なんてしなくたっていいのにね」


ビクトールは、娘は嫁に出すものだという固定観念が抜けないらしく、

数年前から何度も見合いの話を持ち込んできている。

相手の方も新興貴族とはいえ、国王の信頼厚いアーティカの長の娘ならば、

とかなり乗り気で見合いにのぞんでくるのだが、当のダナが乗り気ではない。