最後の一つまで用意されているあたり、
緊張感がないとしかいいようがない。


「お弁当って……」


苦笑しかけたディオに、
ルッツはまじめな顔で言った。

「腹が減ってはなんとやらって言うでしょ?
ほい、君お弁当係」


飛行服を身につけた二人を、
戦闘機に乗せるところまで数分。

最後にディオにバスケットを押しつけると、ルッツは言った。

「コック叩き起こして作らせたんだから、
粗末にしちゃあだめだよ?」

「……そろそろ出たいんだけど?」

「焦らない、焦らない」


あきらかにいらついているダナをなだめてルッツは、
通話装置ごしに連絡を取った。

「フォルーシャ号が出港したら、君たちは死角になる角度を狙って脱出するようにだって。
まあ、すぐ気づかれちゃうだろうけどね」


やがて、ゆっくりとフォルーシャ号が動き始めた。