空をなくしたその先に

彼の部屋で唯一金銭的に価値があるものといえば、

壁に作りつけられた棚に並ぶフォースダイト鉱石のかけらくらいのものだ。

ネクタイをゆるめて、ベッドの上に放り出す。

上着の内ポケットに納めた書類を手にとって、ディオは顔をしかめた。

これをどうしよう?

ここまで大切に持ってきたこれを。


「ようやく戻ったか」


フェイモスは、頭をたれるビクトールに言った。

七十でこの世を去ったディオゲネスより十歳年下であるが、それよりはるかに若く見える。

何かと病弱な兄とは違い、若い頃から体力には自信がある。

若い頃には兄がいなくなれば、自分が国王になれるという野望もあった。

実際兄ではなく彼を王位につけたいと、もちかけられたこともあった。

その話にのらなかったのは、王位がほしくなかったからというわけではない。

さほど遠くない未来に王位は自分のもとへやってくると、確信していたからだった。